失礼ながら私は塩田千春に関してまったく知識がありませんでした。
今回森美術館で個展が行われるということを知りました。ネットニュースやSNSで露出が多かったので行ってみようと思ったわけです。
個展の副題は【魂がふるえる】
私は会場に入るまでは、塩田千春を空間芸術家だと思っていました。
お台場の森ビルデジタルアートミュージアムのチームラボの、圧倒的なデジタルアート空間。あのようなものかと想像していました。
しかし、えっ! 全然ちがうじゃん! とすぐさまアタマの中のスイッチを切り替えました。
まずエントランスにある個展の看板は、デザイン今っぽいでしょう? 上部写真。
私はこの看板を見て【魂がふるえる】という言葉がなんかしっくりこないな、と思っていたのですよ。この看板は おしゃれな女性週刊誌につかわれるような雰囲気だからです。
でも中に入るともっとドロドロした人間臭い、根源的な展覧会でした。
塩田千春の略歴と作品
塩田千春って何者かというと
現在はベルリンを拠点に活動しているアーティストだそうです。
京都精華大学を卒業後、海外のアーティストに影響を受けて、活動を始めます。
ベルリンを拠点にグローバルな活躍をする塩田千春は、記憶、不安、夢、沈黙など、かたちの無いものを表現したパフォーマンスやインスタレーションで知られています。個人的な体験を出発点にしながらも、その作品はアイデンティティ、境界、存在といった普遍的な概念を問うことで世界の幅広い人々を惹きつけてきました。なかでも黒や赤の糸を空間全体に張り巡らせたダイナミックなインスタレーションは、彼女の代表的なシリーズとなっています。
転載 : Mori Art Museun
上記はオーストラリアで交換留学中に制作した作品。パネルになっています。解説によると夢の中で自分が絵になり、自分がどう動いたら絵がよくなるだろうと思い、自ら血の色のエナメルをかぶり絵になることを試みたものですとのこと。この時彼女は「洗練された美術による美術作品でなく、全身を投入した身体表現による最初の作品」となったと言っています。
絵筆を捨てて、パフォーマンスやインスタレーションを表現として初めて選択した原点がこれ!
会場では最初のほうのゾーンにありますのでぜひこのパネルを見て欲しいところです。
エログロの殺人現場みたいだと思うのが一般的かな〜
この若い時代にすでに塩田千春の魂は震え始めたようです。しかし、血吹雪を想像させるような恐ろしい表現には閉口する人もいるかもしれないけれど、彼女の原点であることには変わりありません。でも少し直截的な表現です。
まずこのことを踏まえてインスタレーション空間を感じてみてください。
【不確かな旅】と呼ばれるこの代表作は空間に絵を描くように赤い糸を張りめぐらせます。実際には床に設置してある船から糸を繋いで空間にしていきます。糸は面となって、そして空間になります。
神経組織? 毛細血管? なにか人間の体内をさまようような不思議な感覚に襲われます。部分的なところを見ると子供の時に遊んだ【あやとり】に見えたりするんだけど、会場を包み込み空間を組み上げていくのは見事な作品ですね。人とのつながり、赤い糸っていうのもあったかな!
言葉は汚いけれど、この個展の根底には、ゾンビの世界、ほとばしる血液、はみ出す内臓、糞尿など、そこには生命の根元に引き込まれる情動があります。
作品を見る場合には、説明がパネルとして書かれていますので、必ずじっくりとよく読んで見るといいですよ。
他にもたくさん作品が展示されています。塩田千春が所有する玩具を作品化したものや、空間を黒い糸で張りめぐらせた作品などなど。
夏休み中の展覧会
小学生が家族と訪れていました。作品を見てこわ〜いと感想もらしていました。単なるイメージとして訪れるにはこの展覧会は子どもには厳しいかもしれませんね。
森美術館はキュレーターがけっこうアングラずきなところがあって、六本木にあるオフィスビルの最上階にあるおしゃれな美術館のくせに開催される展覧会がちょっと、ってときがあります。ところがそのギャップがおもしろいところでですね!
アングラって意味は
元々はアンダーグラウンドとは地下運動を通じて、旧来の社会体制に対しての反発、批判精神からのいわゆる反体制 ... その担い手として、アングラ演劇では唐十郎率いる状況劇場、寺山修司らの天井桟敷が主に代表される。現代美術は「具体美術協会」が創設され、極めて革新的な美術表現が展開された。
この個展、写真は一部著作権が絡むもの以外撮り放題です。ということはSNSにアップしてもいい!ということになりますが、結局このインスタ映えする作品ははどんどん拡散されて、伝播していく訳です。写真撮影を厳しく禁じられた展覧会よりもその方が広告効果ははかりしれないほどあるわけです。
塩田千春展【魂がふるえる】私としてはおすすめの展覧会です。
でも、チームラボとは違いますからね!