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デザイン再考 現代美術・入門

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アート デザイン

芸術から離反するデザイン

更新日:

私が美大生だった頃、アートとデザインの関連性について学んだのは、大学の教授からではなく一冊の本からでした。

その本の著者は若林直樹氏 著者紹介のページでは広告プランナー・現代美術作家と紹介されています。偶然にも私と同じ、東京造形大学の彫刻科で美術の勉強をしていますが、ある理由で中退。その後はフランスの美術大学に留学しますが実技でなく論文で学位を習得して帰国後は広告プランナーとして活動します。

この本は純粋芸術、商業美術の二つの領域で活躍した著者だからこそ書くことがができる内容で、当時古典的な美術を学ばなければならなかった一美大生の私にとっては大きな刺激になりました。

私は、古典美術、現代美術、デザインなど違いに関しては認めるにしろ、白黒つける考えはありませんが、私自身も入学した時は学部の先生たちには反発を感じていました。今思えば若かったなと反省します。

わかりたいあなたのための 現代美術・入門

この本は宝島社から1987年に出版されています。もう32年前です。
アートとデザインに関するサイトブログを書き始めて、本棚からひっぱり出し、再度読み始めました。

内容はかなりディープで普通に読むと哲学書と同じくらい難しいです。
さすがに一気通貫で読むのがきついので、興味のあるところだけ飛ばし読みをしているのですが、進めば進むほど内容に引き込まれて行きます。
美術とデザインの関係を知るのには難解なことを省けばかなり面白いのです。

デザインとアートの離反

過去に下記の記事を書きました。デザインとアートの違いについてです。今回この本を熟読するにあたり考えがまた少し変り始めました。

【わかりたいあなたのための 現代美術・入門】
この本にはアートとデザインの二つのカテゴリーがどうやって分離して行ったのかがわかり易く書かれている部分があります。
章は「ふたつの世界大戦」激動の時代と美術。その最初に書かれています【工業社会とデザイナーの誕生】からです。

19世紀に産業革命が起こり、製品の大量生産がこの時代に、ものすごい勢いで始まります。そんな中デザインは初めてアート(芸術)から離反し始めます。

デザインという語は、すでにルネッサンス頃から使われてきた。しかし、その意味は物の表面を装飾し見栄えをよくすることであった。簡単に言えば、「箱をデザインする」とは」箱の表面に絵を描いたり模様を掘りつけたりすることだったのである。

これって現代の人のデザインイメージそそままですね。外側を見栄え良くすることで商品のイメージがよくなり、販促に繋がるわけですから。
当時美術界という権力の中枢に属していた人たちも、デザインはこのレベルの物でしかかなく。バカにしていたようです。

ところが19世紀の末になると工業製品が家庭生活に侵入し始めます。それと同時に中産階級なる人たちが現れてくるのです。

それで下記の階層闘争の図式が生まれます。

貴族、富裕層=美術 × 庶民、中産階級=工業製品

歴史の中で美術を支えているきた富裕層や貴族たちには、工業製品などは、軽微(デザイン)なものとして扱っているきたわけです。もともとデザインは芸術から産まれてきた物であるから富裕層にとっては目障りであるに違いないのでしょう。

時代の趨勢には人間は決して逆らうことができません。

近代化や高度な貨幣経済が進めば進むほど、人々の間にはデザインが浸透して行きます。そしてデザインを身近に感じる人の方が増えてきたのです。

デザインの逆襲

家具や食器なども自分たちの生活感覚にあったものが求められた。それまでの貴族的で宗教臭のあるものは、しだいに嫌われていく運命にあったのである。

そしてさらに拍車をかけたのが、新しい機能を備えた工業製品の登場です。この本には魔法瓶のことにふれているので、また引用します。

それまでは存在しなかった製品が次々と考案され新しく形を決めなければならなくなってきたのである。たとえば魔法瓶は1881年に発明され、世紀末のレジャーのしゃれた小道具として広まるのだが、この形はどうやって決めたのだろう? … だいいち魔法瓶はガラスと金属の複合体で、そのうえ保温力こそ合理的に確保しなければならない…

こうなるとデザインは工業製品と切っても切れない間柄になり、世界中に広く浸透して行きます。

富裕層や貴族にとっては目障りな、低劣に思われていたデザインが産業革命後の大量生産、消費社会を経て、アートから離反し反撃をしはじめてきたと感じたかもしれません。

現在の私たちにとってはデザインもアートも同列に存在しています。
でもこの時代の名残りがあるのでしょう。やはりアート(芸術)はデザインよりも格が上であるし、展覧会があれば高い入場料を払っても見に行くわけです。でも、工業製品、たとえばスマホなどは捉え方は違うわけです。これってあくまでスマホであって芸術であるという意識はないわけです。

戦争によって位置付けられたデザインの正当性

このころ芸術の中からも、従来の技法や観念からhなれはじめる画家が現れます。

ここ重要で、かねがね私たちは不思議に思っていた抽象絵画の真の姿を知ることになります。

再度先ほどの対立軸を思い出してください。

貴族、富裕層=美術 × 庶民、中産階級=工業製品

の左側の芸術家から、反逆者が現れてくるのです。

それまで宗教、貴族、風景などを描いていた芸術家が徐々に
モチーフを変えはじめ、さらには描かれた絵に関しては、見た通りでなく
形の解釈を始めそして、変形を加え始めます。

キュビズムと呼ばれている絵は誰もが知っているかと思います。
自然を円、円錐、円柱、球に整理して人物を描いています。
この流れはセザンヌから始まり、パリの中心に抽象という流行が席巻して行くのです。その後、シュールレアリズムやダダイズムなど、近代化にあわせて美術界が大きなうねりに巻き込まれていくわけです。
描写をしないで、単純な形でも絵画が成り立つ。新進気鋭の芸術家は次から次へと、旧態然とした体制から離脱して行きます。

そして第一次世界大戦でヨーロッパは戦火にまみれ、主流派だった貴族、富裕層=美術は弱体化して行きます。

抽象画家、現代美術作家たちはこの後、美術界を牽引して行きますが、過去にこのような大きな対立軸や時代流れがあって
始めて私たちは理解できるのだと思います。

ピカソもキュビズムの絵を描いていますが、大きな枠でピカソを時系列に見た場合、なぜ? こんな不思議な絵なの? という疑問が湧きますが、時代の流れといっしょに考察すると必然と本質が透けて見えてきます。

デザインはこの次の時代にバウハウスやアールデコといった新しい思想を伴い、違った領域を生み出します。

そして建築デザインとも合流して新たな価値を生み出します。

そのあたり、また記事を書きますので続きは乞うご期待ください。

【わかりたいあなたのための 現代美術・入門】は美術を人類の歴史と掛け合わせることで、自然と現代美術の理解を深めることができます。こちらも是非一読を!

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